卒業論文の紹介

福祉心理学科での学びの「集大成」である「卒業論文」について、2人の卒業生に卒業論文の制作を振り返ってもらい、それぞれの卒業論文を制作したゼミナールの先生にコメントをもらいました。

卒業論文とは?
福祉心理学科では4年生の必修科目として、「卒業論文」を置いています。卒業論文は、自ら課題を設定し、その課題への解決を模索する一連の高度に専門的な学習です。福祉心理学科は、大学という学術研究拠点として、学生が“自ら考え解決する”能力を身につけることを目指しています。

笹田 瑞葵

笹田 瑞葵さん

2018年3月卒業
市立函館高校出身

テーマ
認知する児童期の親からの養育態度と
青年期後期の過剰適応の関連について

過剰適応とは自分の内的な欲求を無理に抑圧してでも、環境からの外的な期待や欲求に応えるための努力を行ってしまう状態で(石津・安保,2008)、青年期の不登校や引きこもり、自傷行為等の問題を示す人の特徴として指摘され、問題視されています(本多,2014)。また、親の養育態度は子供に影響を与える大きな要因です。私の研究では青年期後期の過剰適応と児童期に受けた養育態度はどのような関係があるかについて母親、父親のタイプ、そして両親の組み合わせによるタイプの3種類で調査することを目的としました。その結果、子供のことを思った愛のある養育態度は子供を過剰適応にはせずに、社会に適応するために必要な外的側面が高い適応的な子供に育てることが分かりました。また母親とは異なり、父親の受容的な態度では自分らしさを押し殺す内的側面を低減させる関連がみられたことから、母親だけでなく父親の養育態度が子供との関係性で重要視する必要があることが示唆されました。

西山 薫 先生

コメント
西山 薫 先生

本研究では“適応しすぎる”状態である過剰適応に注目しました。過剰適応は内的適応(自分らしさ)と外的適応(他人との協調)のバランスの悪さであり病的状態ではありません。周りを気にしすぎて苦しくなる経験は私達にも多々ありますね。また、問題となる養育態度よりも子を育める養育態度という点も、経験から来る個性的な視点でした。この様な身近な問題への気づきを、心理学的科学的に証明できた卒業研究になったと思います。

高安 早織

木瀬 遙花さん

2018年3月卒業
北広島高校出身

テーマ
マインドワンダリングによる
創造性向上効果の実験的検討

新しいアイディアを出すなど創造性が必要な場合、ぼんやりしたり関係のないことに取り組んでいるときに突然ひらめきが訪れることがあります。このような元の課題から一旦離れている期間はあたため期と呼ばれており、本研究では、「あたため」を経た後の創造性の向上とマインドワンダリングとの関連について取りあげました。マインドワンダリングとは、授業中に授業内容とは関係のないことを考えるなど、心がさまよっている状態のことを指し、あたため期にマインドワンダリングが生じることで、後の創造性が高まることが知られています。本研究では、先行研究で使用されてきた言語的な創造性課題とは性質の異なる、視覚的なひらめきが必要な8枚コイン課題を実験参加者に解かせ、課題の解決にマインドワンダリングが影響するかどうかを調べました。その結果、あたため期に生じるマインドワンダリングは解決にさほど影響しないものの、日常でのマインドワンダリングが多い人ほど解決がしやすいということがわかりました。

マインドワンダリングによる創造性向上効果の実験的検討

眞嶋 良全 先生

コメント
眞嶋 良全 先生

一般に人の能力は限りがあり、限界までの余裕が大きいほど、問題解決の成績が良いと考えられています。しかし、近年、逆に限界までの余裕がない方が問題を解決できるという逆説的な結果が出ています。木瀬さんの研究も、解決が難しくひらめきを要する問題は、日常的に心がさまよいやすい、心の容量を無駄に消費する人の方が解きやすいという結果を示しています。限界があるからこそ、効率を高めるよう工夫されているのでしょう。

大学院臨床心理学専攻について

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