生活心理

2020年度学生作品

一覧表
番号 論文表題
#P2001 「菓子」コミュニケーションが社会スキルに及ぼす効果
―高齢者を対象とした検討―
#P2002 職場での対人意識は家庭に影響しているのか
―職種を考慮した検討―
#P2003 アイドル属性への選好と性格特性の関連
#P2004 テキストコミュニケーションを好む人と通話を好む人の心理的特徴について
―性別を考慮した検討―
#P2005 メディアによる痩身理想が摂食障害に関わる食行動や心理特性に及ぼす影響
#P2006 ライフイベントが性格特性に及ぼす影響
―ネガティブライフイベントとポジティブライフイベントを考慮した検討―
#P2007 “恋人を欲しいと思わない”人の特徴と恋愛状況が自我発達に及ぼす影響

「菓子」コミュニケーションが社会スキルに及ぼす効果
―高齢者を対象とした検討―

高齢者が定期的に集う場では,お互いに菓子を持ち寄り一緒に食すことで会話のきっかけが生まれ,菓子を通じて良好な人間関係が維持されるケースがしばしば観察される。本研究では,高齢者を対象に,菓子を介して他者との円滑なコミュニケーションを維持しようとする人とそうではない人において,どのような社会スキルの相違があるのかを調べた。その結果,菓子をコミュニケーションツールとして頻繁に利用している高齢者は,そうでない高齢者に比べて「初歩的スキル」「高度スキル」「感情処理スキル」「攻撃に代わるスキル」「計画のスキル」の社会スキル得点が高かった。このことから,菓子をコミュニケーションツールとして利用する高齢者は,そうでない高齢者に比べて,他者を意識しながらその場の状況に適切に対応できる社会スキルが高いことが分かった。75歳以上の後期高齢者の中には一人暮らしの人も多く,他者との交流を望む一方,積極的に他者と関わり,長期に渡って人間関係を良好に保つことにストレスを感じる人も少なくない。菓子という嗜好品を上手く介することで,そうした対人場面における様々なストレスを低減し,解消できる可能性について論じられた。

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職場での対人意識は家庭に影響しているのか
―職種を考慮した検討―

働いている人にとって,職場で過ごす時間は,家庭と同程度かそれ以上の時間を過ごしている人も少なくない。そのため,家庭のルールはしばしば職場の影響受けている可能性が考えられる。また,職場といっても職種によって様々な制約が存在する。とくに,ピアスやネイル,タトゥーなどの身体装飾は,規則やモラルとしての制約があるところも多い。そこで,本研究では,他者が施している身体装飾に対する職場の意識が家庭にどのような影響を及ぼしているのかを職種別に調査した。その結果,事務・オフィスワークに関しては,職場と家庭における身体装飾に対するポジティブ意識の差はほとんど見られなかった。販売・アパレルに関しては,職場での身体装飾に対するポジティブ意識が他の職種よりも相対的に高く,これにより家庭の身体装飾に関するポジティブ意識が若干低下していた。教育・医療では,職場での身体装飾に対するポジティブ意識は低いが,家庭に対するポジティブ意識は職場に比べて高かった。これらのことから,職場の同僚に対して抱く身体装飾に対するポジティブ意識は,職種によって異なるのと同時に,職場に存在する身体装飾に関する制約は家庭に様々な形で影響を及ぼしていることがわかった。

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アイドル属性への選好と性格特性の関連

近年,男女問わず様々なコンセプトや特徴をもったアイドルグループが存在している。こうしたアイドルは,大まかに「かっこいい」「かわいい」「おもしろい」といった属性に区分することができるとともに,この属性によってファン行動の特徴も大きく異なる。本研究は,このアイドル属性への選好によってファン行動が異なるだけでなく,ファンの性格特性との間にどのような関連性があるのかを検討した。とくに,交流分析をもとに自我状態を量的に表現可能なエゴグラムを用い,アイドル属性ごとに,批判的な親のCP (Critical Parent),保護的な親のNP (Nurturing Parent),大人のA (Adult),自由奔放な子どものFC (Free Child),順応的な子どものAC (Adapted Child) の5つの特性を検討した。その結果,アイドル属性の選好によってそれぞれ異なる特徴が得られた。かっこいいアイドルグループを好む群は自己表現が不得手であり,かわいいアイドルグループを好む群は自分の理想を追及する特性を有し,おもしろいアイドルグループを好む群は真面目な気質とともに自己主張が苦手であるという特徴が見られた。これらの特徴は,実際のアイドルが売りにしている特徴とは異なり,むしろ自分の性格特性とは対照的な特徴をもっているアイドルグループに対して高いファン行動を取る傾向がある可能性が示唆された。

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テキストコミュニケーションを好む人と通話を好む人の心理的特徴について
―性別を考慮した検討―

近年,私たちのコミュニケーションを支える重要なツールには,通話の他にテキストコミュニケーションが大きな役割を果たすようになってきている。とくに,LINEといったコミュニケーションアプリの普及により,テキストコミュニケーションの利用頻度は急激に増加している。そのため,人に相談をもちかけたり,相談に乗る際にもテキストコミュニケーションが活用されている。その一方で,テキストコミュニケーションよりも通話を好む人も存在している。そこで,本研究では、他者に自分の悩み事を相談するときに、テキストコミュニケーションを好んで使う人と通話を好んで使う人とで性格特性にどのような相違があるのかを男女別に比較検討した。その結果,女性の場合は,テキストコミュニケーションを好む人は劣等性・神経質・抑うつ性が高い一方,通話を好む人は社会的外向性が高かった。男性の場合は,テキストコミュニケーションを好む人は非協調性が高く,通話を好む人は攻撃性・共感性・活動性が高かった。これらの結果から,男女ともにテキストコミュニケーションを好む人は,人と直接会話をすることに抵抗を感じたり,発言に責任を感じる傾向があることが分かった。一方,男女ともに通話を好む人は,他人への気配りに長け,自分の意見を主張できる性格特性であることが分かった。

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メディアによる痩身理想が摂食障害に関わる食行動や心理特性に及ぼす影響

近年,理想とする人物像に対する情報は,テレビ番組や雑誌に加え,YouTubeやInstagramなどの様々なメディアを介して得ることができる。さらに,これらのメディアで注目される俳優やモデルは細身体型であることが多く,彼らの写真はInstagramといったSNSからも簡単に閲覧することができる。そのため,「このモデルのように自分もスタイルが良くなりたい」という願望をきっかけに食事制限を行う人も少なくない。本研究は,こうしたメディア利用によってもたらされる痩身理想が摂食障害に関わる食行動や心理特性にどのような影響を及ぼすのかを検討した。調査には,メディアによる痩身理想の内在化を測定するSATAQ-3Rと摂食障害に関わる食行動や心理特性を測定するEDI-91を使用した。その結果,メディアから痩身理想のプレッシャーを強く受けている人は,EDI-91のうち食事に関わる行動と体型への不満が高く,次いで,内部洞察の欠如,成熟恐怖,達成願望といった心理特性にも影響を及ぼしていた。これらのことから,私たちが日頃から接しているメディアは,憧れの容姿を閲覧できる単なる情報源というよりも,理想の容姿や体型を自分自身と比較する媒体になっていることが明らかとなった。さらに,メディアからもたらされる「もっと痩せなければ」というプレッシャーは,摂食障害に関わる行動や心理特性に影響していることが分かった。

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ライフイベントが性格特性に及ぼす影響
―ネガティブライフイベントとポジティブライフイベントを考慮した検討―

私たちは,生きていく中で様々な出来事を経験する。このライフイベントには,”友人や家族と喧嘩をする・仕事がうまくいかない”などの自分に対してマイナスの経験となるネガティブライフイベント (NLE) と,”達成感を得る・他人に認めてもらえる”などの自分にとってプラスの経験となるポジティブライフイベント(PLE)の2つがある。私たちはこれらのライフイベントを通して自己を形成していることから,NLEが多ければネガティブな人格形成に,逆にPLEが多ければポジティブな人格形成に影響するといったライフイベントの経験が個人の性格特性に影響を及ぼしている可能性は十分に考えられる。そこで,本研究では,NLEとPLEの経験の多さが性格特性にどのような影響を及ぼしているかを検討した。その結果,NLEの経験が多い人は少ない人よりも,神経質,劣等感,抑うつ性が高かった。一方,PLEの経験が多い人は少ない人よりも,社会的外向性,活動性,進取性,自己顕示性が高かった。これらのことから,NLEとPLEは人格形成に対し,それぞれ異なる影響を及ぼしており,NLEとPLEのどちらもバランス良く経験していくことで,より多面的な自己の形成につながることが示唆された。

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“恋人を欲しいと思わない”人の特徴と恋愛状況が自我発達に及ぼす影響

近年,異性と親密になろうとしない“恋人を欲しいと思わない”青年の存在が指摘されている。しかし,この傾向は青年期に限らず,青年期以降の仕事をこなす必要のある人のなかにも,恋愛を必要としない人がいる可能性が考えられる。そこで,本研究では,青年期以降の男女を対象に,恋愛を不要と思う人の特徴を調べるとともに,現在の恋愛状況が自我発達にどのような影響を及ばしているのかを検討した。調査は,高坂 (2013) による6つの因子から構成された恋愛不要理由尺度とOchse&Plus (1986) が作成したErikson and Social-Desirability Scaleの日本語短縮版 (S-ESDS) を用いた。その結果,恋愛不要群における恋愛を不要と思う理由には,男女ともに現在の生活が充実しており,恋人がいることによる様々な負担を軽減したいと考える人が多いということが分かった。次に,自我発達に関わる基本的信頼感・自律性・主体性・勤勉性・アイデンティティ達成・親密性のいずれも恋愛群よりも恋愛不要群が低くなるという結果が得られた。これらのことから,青年期以降の恋愛を必要としない人とは,現在の自分の生活を充実させることを優先し,それに貢献しないことに対してはエネルギーを費やしたくないと考えている可能性が考えられた。さらに,現在,恋愛をしている人よりも自我発達がやや低下する傾向があることが分かった。

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過去年度の論文アーカイブ

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