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【心コミ・リレーエッセイ 2021年度 第19回:「だから僕は音楽を辞めた聴けた」(後藤靖宏/教授 専門:認知心理学/音楽心理学)】

2021/10/27

 Kulusuku を旅した時のことです。現地の人たちと交流していた時に、昔から伝わる民族音楽を聴く機会に恵まれました。初めて聴くその調べはとても幻想的で、一瞬にして虜になってしまいました。


 音楽を聴く時、そこには「体制化」と呼ばれる心理的な処理が働いています。音楽心理学の授業は、ある音列は音楽と感じられるのに、別の音は雑音にしか聞こえないのはなぜかという話から始まります。ちょうど先日の授業で、受講生のみんなと様々な音楽を聞きながら、手拍子を打ったり鼻歌をうたったりしてそのことを学びました。


 日本から遙か8,686kmも離れた、氷河に覆われる極北の地で僕が音楽を“聴く”ことができたのも、そうした心の働きのおかげです。演奏が終わるころには、日本人と顔が似ていると言われるイヌイットの人たちの笑顔が、ますます他人には思えなくなってきました。「音楽は国境のない言語」、この言葉を噛みしめながら、夜空一面に輝くオーロラを仰ぎ見ました。



Kulusukuの可愛らしい家々



日本にもいそう?