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【心コミ・リレーエッセイ 2021年度 第25回:「「語り」というコミュニケーション」(大島寿美子/教授 専門:コミュニケーション学(科学、医学、ケア、ジャーナリズム)/グループアプローチ)】

2021/12/08

今日は、11月に刊行した本についてお話したいと思います。

その本の名前は『がんの「語り」』と言います。


 みなさんも、学校で外部講師の方のお話を聞いたことがあると思います。中にはさまざまな困難と向き合ってきた人たちがいたかもしれません。そのような方々の体験談を聞いて、心が動かされたり、勇気づけられたりした人もいたのではないでしょうか。新聞やテレビ番組である人の体験を読んだり見たりして、感動した経験がある人もいるでしょう。体験の語りは、聞き手に大きな学びをもたらします。


 この本では、がんという病いを体験した人や家族が体験を話したり、書いたりすることの意味、授業や講演、研修などで話すときの伝え方に関する調査研究成果を一般向けにまとめました。開発した方法を使って小学校や中学校の授業、医療従事者の研修などでがん患者や家族が体験を語った事例や、語りが生徒や医療従事者に与えた影響についての分析結果も紹介しています。


 体験を語ることには、話し手と聞き手の双方にとって意味があります。病いの体験は、良くないものと一般的には考えられていますが、体験を「物語」として自らまとめ、人前で語ることは、語る人、聞く人の両方に大きな学びと前に進む力をもたらします。


 この本の執筆を通じて感じたのは、聞く・語るという「コミュニケーション」が持つ大きな可能性でした。ちょうど11月初めにNHKがオンラインで開催した「がんフォーラム」にパネリストとして呼んでいただき、「患者が”語る”ことで変わっていく未来」についてお話しました。12月11日の読売新聞に詳細が掲載されることになっています。NHKでもダイジェストが放映される予定だそうです。「語り」に関心を持つ人が増え、「語り」というコミュニケーションの可能性が広がっていることをとても嬉しく思います。


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