《活かせる国際性》を身につける

ヨーロッパと日本

国内や地域における仕事や暮らしも、今やグローバル化に無縁ではいられません。グローバル社会や国際関係について体系的に学ぶ〈グローバル社会コース〉は、そのような問題意識から設置されました。〈応用経済コース〉〈社会経済コース〉と組み合わせて学ぶことで、世界経済の動きと国際社会の変化をヴィヴィッドに捉える感覚をそなえた、真のグローバル人材の輩出を目指します。

経済学科には、地球上のさまざまな地域を研究対象としている教員がいます。ここでは、主にヨーロッパを研究対象としている教員の講義と研究内容について紹介します。日本は古くからヨーロッパの先進的な制度や技術に学んできました。現代の日本社会は、少子高齢化や脱炭素社会の実現、経済安定化といった困難な課題に直面しています。これらの解決策を考えるうえでも、先進的な取り組みを行っているヨーロッパの事例に学ぶことは大いに役立つでしょう。

ヨーロッパの地図
金野教授の顔写真

金野 雄五 教授[経済学科長]

担当科目
国際経済学
現代の国際社会
北海道の企業
出身大学院
北海道大学(院)
兼職・元職など
(元)みずほリサーチ&テクノロジーズ
(元)外務省専門調査委員(ロシア駐在)
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター共同研究員

ロシア

国際経済学の観点から

国際
経済学

私が主に担当している講義は国際経済学です。貿易収支や為替レートなど、私たちの身近で起きている国際経済の様々な事象を理解する上で有用な諸概念・諸理論を解説します。演習では、3年次前期までは国際経済に関する書籍の輪読を行います。その後は、各自が関心のあるテーマを設定し、文献を読み、皆で議論を行いながら、ゼミ論文の完成を目指します。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、西側諸国は、ロシア産石油・ガスの輸入禁止などの強力な経済制裁を発動しました。こうした制裁は、ロシア経済を弱体化させる一方で、西側諸国にもエネルギー価格の高騰などの悪影響をもたらしています。このことは、今日、世界各国が貿易や投資を通じて相互に緊密に結びついていることを示すとともに、ウクライナ戦争の早期終結が、世界経済が共通して直面する課題であることも示唆していると言えるでしょう。

嶋内准教授の顔写真

嶋内 健 准教授

担当科目
社会政策論
労働経済論
現代ヨーロッパ論
出身大学院
立命館大学(院)

デンマーク(北欧諸国)

社会
政策論

社会政策論(社会保障や雇用政策など)、労働経済論現代ヨーロッパ論を担当しています。日本は経済こそ発展していますが、暮らしの安心を支える社会保障・雇用・教育が不十分にしか整備されていません。私の授業では庶民が生活の豊かさを感じにくい理由を、社会政策や労働、そしてヨーロッパとの比較から学習します。

私の研究はデンマークの社会政策です。デンマークをふくむ北欧諸国は、高度に発展した福祉・教育などで知られています。しかし、様々な理由でその恩恵が届かず、生活に困難を抱えている人びとが少なからず存在します。私は日本の研究者が着手してこなかったこうした実態に着目し、排除を生み出す要因と包摂する社会のあり様を研究しています。

藤井専任講師の顔写真

藤井 康平 専任講師

担当科目
環境経済学
環境政策論
北海道の企業
メディアと社会
出身大学院
東京大学(院)

オーストリア・ドイツ

環境
経済学

私はこれまで、広く環境と経済社会の関係について研究を行ってきました。具体的には、国や自治体で環境政策が取り入れられる要因の分析や、再生可能エネルギーを用いた地域活性化のあり方の検討などに取り組んできました。特に後者については、オーストリアやドイツの「小さな村が地域の資源を活かして豊かな地域づくりを行う」という事例を研究してきました。例えばオーストリアでは、国内で消費されるエネルギーの多くが森林バイオマスと水力という「森と水の恵み」によって小規模分散的に生み出されています。日本も森や水が豊かであるという点で、オーストリアの取り組みは重要なモデルケースになる可能性を秘めています。

私が担当する環境経済学環境政策論では、教科書的な理論を扱うことに加えて、今述べた研究成果を織り交ぜながら、環境と経済のより良い関係性について考えます。

環境経済学・環境政策論 [応用経済コース]

環境問題を経済学の視点で分析し、解決策を考える。

現在、私たちは様々な環境問題に直面しています。環境問題の概念は広く、気候変動問題のようなグローバルな問題から、資源・エネルギー問題、自然保護問題、さらにはごみ問題のようなローカルな問題まで、様々な問題を包含しています。環境経済学とは、そのような「環境問題」を「経済学」の視点で分析し、解決策を考える学問分野です。

「環境経済学」の講義では、まず理論編として、「環境問題はなぜ起こるのか」「環境問題を解決するための手段は何か」「解決策の限界点は何か」などについて、主にミクロ経済学の考え方を基にして学びます。次に現実編として、気候変動、資源・エネルギー、公害、廃棄物など様々な環境問題の具体的事例について学びます。理論編と現実編をとおして、環境問題が私たちの社会や暮らしにどのような影響を与えているかを考えるとともに、理論と現実のギャップがなぜ生まれるのかを追及します。

「環境政策論」の講義では、「環境政策はなぜ導入され、どのように形作られていくのか」について、講義担当者がこれまで実際に研究対象としてきた様々な環境問題をもとに考えていきます。

環境経済学のゼミでは、学年ごとに取り組むべき課題を設定し、プロジェクト形式で調査研究活動を進めています。フィールドワークやヒアリングを実施したり、自治体や企業と交渉したり、真面目に取り組むとかなり大変ですが、学生時代の得難い経験になるでしょう。

“ナッジ”を利用した古着の回収と、その有効活用にも取り組んでいます。生協で古着バザーを開催しました。
海ごみを使ってアートを作成し、札幌市資料館で展示会を行いました。
キッチンカーご協力のもと、規格外のじゃがいもを雪室で保存し、甘みを引き出したフライドポテトの販売を行いました。
中学校で海洋汚染問題に関する環境教育を行っている様子
学内にはゼミの畑があり、実際に野菜を育てることで自然とのかかわりを学んでいます。

アジアと日本

北星経済学科では、学科専門課程での発展的な語学学習を促すため、「実践英語」「時事英語」といった科目を置いています。加えて欧州とアジアで「海外実習」を展開し、海外で研究を行う機会を提供しています。その他にも、北星ならではの充実した交換留学制度や、海外事情・副専攻を通じても海外での学びの場を得ることができます。国際交流科目ではキャンパス内で留学生と共に学び、交流できます。また、国際的な課題に取り組む「フェアトレード」プログラムの展開も、北星経済学科の特色です。

ここでは、主にアジアを研究対象としている教員の講義と研究内容について紹介します。近年、アジアでは急激な経済発展を遂げる国が増えています。他方で、急成長に伴う環境問題や貧困問題の発生、富める国と富めない国の間の経済格差の拡大など、新たな課題も生まれています。アジアの現状を知り、アジアの一員として私たちに何ができるかを考えることを通じて、〈活かせる国際性〉を身に付けます。

アジアの地図
浦野教授の顔写真

浦野 真理子 教授

担当科目
現代の国際社会
グローバル社会論
開発経済論
現代アジア論
出身大学院
ジョージタウン大学(院)

インドネシア

現代
アジア論

私の研究テーマは、東南アジアの国、インドネシアの森林地域の環境と社会です。インドネシアは、2億7千万人と、世界第4位の人口を擁し、デジタル化や巨大な国内市場を背景に経済発展しています。

インドネシアには豊富な天然資源があり、熱帯林面積は世界第3位、電気自動車の普及で需要急増の鉱物ニッケルの生産量は世界1位です。このような天然資源の開発は経済成長に貢献しますが、環境破壊も起こしています。私はインドネシアでも資源が豊かなボルネオ島とスマトラ島の農村で調査を行っていますが、パーム油の原料を生産する大規模アブラヤシ栽培によって森林減少や火災、水質汚染や水不足などの問題も起きています。環境保全と地域住民の所得向上を両立するためには、品質の良いカカオ豆やコーヒーの生産など、住民が直接利益を得られるような、多種類の作物を組み合わせて生産するアグロフォレストリーも有効です。そして、住民は貧困で必要な資金が不足しているので、環境保全や作物増産や品質向上のためには国際的な援助も求められます。

授業では、インドネシアでの訪問調査を通して得た現地の最新の情報を伝えます。また、インドネシア人、フィリピン人など北海道で働く外国人の皆さんから直接お話を聞いたり、円山動物園でアジアの環境保全を考えたり、アジア各地の協定校と英語で研究発表・交流の機会も持ちます。こうした活動を通じて、学生さんには日本とアジアの将来のために何ができるかを考えてほしいと思います。

野本准教授の顔写真

野本 啓介 准教授

担当科目
国際協力論
海外実習
グローバルガバナンス論
出身大学院
慶應義塾大学(院)
兼職・元職など
(元)外務省専門調査委員(ベトナム駐在)
(元)国際協力銀行(現JICA)

ベトナム他東南アジア

国際
協力論

国際協力論では、2つの意味での国際協力を国際関係論・国際政治学の視点から扱います。①開発途上国の国づくりのための援助・支援、②国際社会における国境を超えた様々な課題の解決のための協力。最近の国際社会では、Covid-19、ロシア・ウクライナ戦争、アメリカ・トランプ政権による大きな政策変更など、これまでの国際秩序に挑戦し覆しかねない出来事が次々に起こっています。こうした動きをフォローしつつ、最新の状況を踏まえた教育を目指しています。過去に駐在して長期間にわたって調査しており日本との関係も深いベトナムと周辺の東南アジア諸国を中心としつつ、国際協力という分野の性質上、全世界を研究対象としています。

山口准教授の顔写真

山口 哲由 准教授

担当科目
現代の国際社会
地理学
地誌概説
出身大学院
京都大学(院)

北インド・中国

地理学

現代は、ヒトやモノの国境を越えた移動が激しくなっており、日本経済を考えるうえでも国際的な情勢の把握は必要不可欠になっています。日々飛び込んでくるニュースを理解するうえでも、世界や日本の地理的情報は欠かせません。私が担当する現代の国際社会地誌概説地理学の授業では、国際社会を読み解くうえでの重要なキーワードや、知っておきたい社会や文化に関する地理的知識を学びます。

私はインドや中国において、環境問題や貧困削減に関連した研究に取り組み、現地の人々の暮らしを体験しながら、実情を理解するために長期間のフィールドワークをおこなってきました。こうした経験や資料を授業で積極的に活用して臨場感のある学びの機会を提供します。

萱野教授の顔写真

萱野 智篤 教授

担当科目
国際関係論
国際政治学
現代政治学・フェアトレード
政治学
出身大学院
北海道大学(院)
兼職・元職など
(元)国連開発計画(UNDP、ダッカ事務所)
(元)日本赤十字社(ダッカ駐在代表)

バングラデシュ

国際
関係論

国際社会には統一権力がありません。この潜在的無政府状態でいかに平和と安定を作るかが国際政治学のテーマです。また、現代の国際社会では国際機関や多国籍企業、国際NGOも重要な主体となっています。国際関係論では、これらの相互関係、構造を学び、演習では、フェアトレードの理論と実践から持続可能な世界を構想します。

バングラデシュは1971年の独立以来「世界の最貧国」と呼ばれていましたが、近年の高度経済成長でついに後発開発途上国(LLDC)から卒業しました。2024年の夏には大学生が主導した民衆運動で18年間続いた独裁政権が倒され改革が進んでいます。親日的な国で、日本とのかかわりも深く、その人や歴史・文化から学ぶことの多い国です。

〈フェアトレード〉への長年の取り組みは北星経済学科の特色です。

フェア
トレード

途上国の生産者と先進国の消費者を、公正な価格を設定した商品で結び、両者の間に公正な関係を作り出すことを目指すフェアトレードは、近年世界で、また日本で大きな広がりを見せています。消費のありかたを変えることが途上国の貧困の解決につながります。この科目では、講義やワークショップにより、フェアトレードのもつ意義を、その背景となる世界経済の問題とともにさまざまな角度から多角的に学びます。その上で、札幌市内で開催されるフェアトレードイベントや道内のフェアトレード団体の活動に実際に参加する実習活動をも行い、フェアトレードの理論と実践への理解を深めます。

北星学園大学は、日本国内では2番目に「フェアトレード大学」に認定されています。

中村さんの写真
中村 さん
旭川南高校出身
2023年入学

スーパーやコンビニではチョコレートやコーヒーは安価で手に入りますが、その価格は生産者に対して正当な賃金を払ったうえで設定されているものではない、だから生産者がきちんと生活していけるようにしていこうという活動が、フェアトレードの基本的な考え方です。

ゼミでは、少人数に分かれてフェアトレードに関する文献の内容をまとめて発表し、疑問点への質問や意見交換で理解を深めます。フェアトレード自体にもいくつか種類があるなど、その歴史的な背景についても学ぶことができました。また所属しているフェアトレードサークルでは、イベントの企画運営に携わっています。

フェアトレードの知識を得てからは、普段の買い物で商品を選ぶことにも少し慎重になりました。残念ながらフェアトレード商品を扱っている店舗はまだ少なく、またどうしても価格に転嫁されるので学生の自分には買いにくいというのが現状です。だからこそ、イベントなどで多くの人に知ってもらいたいと思っています。