経済学的思考をその土台から理解する ─ 歴史・思想からのアプローチ
経済学は、わたしたちが暮らす資本主義経済の運動の法則性を解明する学問です。人類史数十万年の中でさまざまな経済体制が採られましたが、資本主義の時代はそのうち直近300年間ほどを占めるに過ぎません。しかし、また、その300年間ほどの歩みの中で資本主義は大きな変容も遂げています。歴史とその時代の人々の思想とは相互に影響し合っています。〈社会経済コース〉の学びでは、歴史と思想の視角から、経済学的思考を身に付けていきます。

楠木 敦 准教授
- 担当科目
- 基礎経済学
- 経済思想史
- 社会思想史
- 出身大学院
- 北海道大学(院)
基礎経済学では、ミクロ経済学とマクロ経済学の基礎を学び、経済思想史では、経済思想の歴史を学び、社会思想史では、社会思想の歴史を学びます。演習では、現在の日本社会で生じている様々な問題に対して、どのようなアプローチが可能であるのかを議論することによって、幅広い視野および思考の深さ・柔軟性の涵養を目指します。
社会思想を学ぶことを通じて、私たちを支配しているものとは全く異なった考え方や見方があるということを知ることができます。こうして、現代の経済社会の支配的な考え方や見方を相対化することで、経済学をより深く理解することができるようになります。



太田 仙一 専任講師
- 担当科目
- 基礎経済史
- 社会経済史
- 日本経済史
- 出身大学院
- 東京大学(院)
基礎経済史では、中高までの社会科や地歴の知識を補足しつつ経済史の基礎を学んでいきます。社会経済史では、1 年生の時の学習をもとに、欧米や日本を中心とした経済社会の歴史について主に近現代を中心に勉強していきます。日本経済史では、江戸時代の終わりころから現在までの日本経済の変遷を見ていきます。経済史は、自分たちと同じごく普通の生身の人間の活動を学んでいくことだ、という実感を持てるようになってほしいと思っています。
私は主に日本近現代の経済史について、企業活動に着目して研究しています。企業に勤める人々の経歴や、彼らが実際に取り組んでいる業務の内容などを史料にて実証的に分析することを目指しています。


今井 慧仁 専任講師
- 担当科目
- 社会経済学
- 信用と景気循環
- 経済学Ⅱ
- 出身大学院
- 京都大学(院)
現在、私たちは資本主義と呼ばれる社会を生きていますが、今日生じている経済格差や排外的ナショナリズム、地球環境問題などの背景には、この資本主義の原理が強く働いています。私が担当する社会経済学では、諸現象の背後に控える資本主義の原理を論理的に解き明かすことを試みます。また、信用と景気循環では、景気の変化という視角から近代以降の資本主義が歴史的にどのような形態的変容を遂げてきたのか、そして各国の経済が現在、如何なる状況に置かれているのかを具体的に掘り下げます。
私の専門はマルクス経済学で、隆盛を極めるデジタル・プラットフォーム産業が2000年代以降の米中関係にどのように関わってきたのかを研究してきました。昨今何かと注目されることの多い米中対立にも、経済学の見地から積極的に切り込んでいけたらと考えています。


勝村 務 経済学部長
- 担当科目
- 新聞活用
- 現代資本主義論
- 日本経済論Ⅰ
- 文化経済学
- メディアと社会
- 上級新聞活用
- 日本経済論ディベート
- 出身大学院
- 東京大学(院)
- 兼職・元職など
- (元)東京大学客員准教授
- 認定NPO法人エク・プロジェクト理事長
- 日本小学生バレーボール連盟競技委員
わたしたちが暮らしている資本主義経済という社会の構造と本質を、論理的に粘り強く概念を積み上げることにより解き明かすのが、社会経済学です。2023 年度からしばらくわたしが担当する現代資本主義論では、社会経済学の理論的成果を活かし、資本主義の現代に至る段階的変容を分析します。この二つの科目に通底しているのは、「資本主義はなぜ続いてしまうのか?」という問いです。
2023 年3 月に刊行した単著書『マルクス経済学の論点─岐路に立つ世界を読むために─』(社会評論社)では、社会経済学の理論研究と共に、人口・文化・アフリカ経済などを現代資本主義論の観点から扱っています。


- 田邊 さん
わたしたちは資本主義の国で生活していますが、普段はそういうことをあまり意識しないですし、その歴史自体が実はまだ浅いと知って意外な感じがしました。「社会経済学」は経済学の基本となる科目で、資本主義経済の仕組みを学びました。「現代資本主義論」では、そんな資本主義がなぜ現在まで続いているのかということが大きな問いになっています。宝塚歌劇雪組による『Lilac の夢路』をもとに鉄道建設と株式会社の成り立ちを学び、ミュージカルを通して資本主義についての理解が深まりました。
働いておカネをもらう「労働力の商品化」は、今では当たり前ですが、以前はそうではなかったということも知りました。封建的な身分がなくなって自由になった一方で、土地から切り離されて生産手段を持っていない人々のことを「二重の意味で自由な労働者」というそうです。そうした歴史のうえに、今の資本主義、わたしたちの生活があるのだと実感しました。