選んだ道を正解にするのは自分

木下樹里奈さん

木下 樹里奈きのした じゅりなさん

就職先
北海道大学病院 精神科神経科 Sapporo
学部・学科
社会福祉学部 福祉心理学科
卒業年
2022年 福祉心理学科卒業
2024年 臨床心理学専攻修了
留学先
オーストラリア
出身高校
小樽双葉高等学校

幼い頃からピアノを習い、今ではゴスペルを趣味にしている木下さん。小樽から高速バスで職場に通いながら、北海道大学病院で公認心理師として働いています。
留学期間中はシドニー大学で学び、英語で現地の心理学研究に触れました。木下さんがどのようにして心理学の道を歩むことになり、学生時代の経験が現在のお仕事にどう繋がっているのか。お話を伺いました。

迷いながら見つけた心理学への道

昔から「人と違うことをしたい」という思いがあり、中学3年生のときにアメリカへ2週間ホームステイしました。英語が話せない中での挑戦でしたが、人と話す楽しさに支えられ、なんとか乗り越えることができました。

高校では獣医を目指して勉強していましたが、現役合格できず、浪人することにしました。しかし、ちょうどその頃、母ががんを患いました。「母が病気の中、このまま浪人を続けて獣医を目指すべきなのか」と進路を見直すことに。迷いながらも心理学に興味を持ち、国家資格の「公認心理師」が誕生したタイミングだったこともあり、カリキュラムが充実していた北星学園大学を選びました。

勤務先でインタビューに応じてくれた木下さん
勤務先でインタビューに応じてくれた木下さん

辛い出来事を乗り越え、グローバルな視野を広げた留学経験

大学入学後も留学したい気持ちはずっと持っていました。他学部との交流にも魅力を感じ、大学2年生の時に「海外事情」に参加することを決意しました。その直前、母が亡くなるという辛い出来事もあり、何かしていないと落ち着かない状態で。気持ちを切り替えるためにも留学を選びました。半年間の準備期間では、チームリーダーとしてメンバーをまとめ、渡航に向けた準備を進めました。特に印象に残っているのは、現地企業やプロフェッショナルにアポを取るために200名分のメールリストを作り、自分たちを売り込んだことです。

メンバー同士で話し合って企画も考えるのですが、完璧主義になってしまってなかなか進まないこともありました。そんな時、オーストラリア在住のグローバルスキルコーチであるアイクマンさんから、「完璧じゃなくてもいいから途中段階を共有しながら進めることが重要」と助言を受け、柔軟性と行動力を伸ばせたことも今に活きる学びとなりました。

シドニー大学にて
シドニー大学にて
シドニーでの突撃インタビューの様子
シドニーでの突撃インタビューの様子

シドニーの恩師・ビクトリア先生との出会い

準備期間を経て、コロナが始まる直前にシドニーに渡航しました。午前中は語学学校で英語を学び、午後はシドニー大学でのレクチャーやプロジェクトに参加する日々を送りました。中でもシドニー大学のビクトリア・ローリングス先生との出会いは大切な思い出です。先生は偏見をテーマに研究しており、話を聞くたび「なぜ偏見を持つ人と持たない人がいるのか?」という問いを探求していた私にとって、彼女の研究背景や考え方・姿勢は深く感銘を受けるものでした。

私自身、犯罪を起こす人々の心理や背景に興味を持っており、画一的に批判する風潮に違和感を感じていましたが、この関心を共有できる人は少なく孤独を感じていました。ビクトリア先生はそんな私の考えに共感してくださり、「わかってくれる人がいる」という心強さを得ることができました。また、先生の「関わりを持つことで知ることができることの多さ」という考えに強く共感しました。留学を通して、調べるだけではわからない体験の重要性を私も肌で感じたからです。心理学や支援分野における日本と海外の進展度の違いも痛感しました。

現地でフットボールを楽しんでいる様子
現地でフットボールを楽しんでいる様子
海外の学生たちとのオンラインセッション
海外の学生たちとのオンラインセッション

留学で身につけたコミュニケーション力で患者に寄り添う

帰国後、国内での海外交流を続けながら公認心理師の資格を取得しました。しかし、興味のある成人精神科や司法分野で経験を積める求人が見つからず、就職活動には苦労しました。北海道大学病院の分院である司法精神医療センターの求人を見つけた時は、「これだ!」と思ったのですが、実務経験が求められ応募を断念しようと考えていました。しかしどうしても諦めきれずにゼミの先生に思いを伝えたところ、ご縁を繋いでいただき、今の職場で経験を積むチャンスを得ることができました。

現在は、公認心理師として患者さんの心理検査を担当しています。性格検査や発達検査、認知機能を測る検査、てんかん患者向けの検査など、幅広い分野に携わっています。学生時代の留学経験は今の仕事にも活きており、特に異文化の中でコミュニケーションを磨いた経験が、患者さんはもちろんのこと、院内で働く他職種のスタッフなど、バックグラウンドの異なる者同士でも臆せず向き合う力になっています。

1年目ながら現場で活躍する木下さん
1年目ながら現場で活躍する木下さん

将来は海外での心理学研究も視野に

現在の職場で経験を積みながら、司法分野での活躍を目指して心理学の道を深めていきたいと考えています。特に興味があるのは、犯罪を起こす人々の心理や、その背景にある社会的要因を探る研究です。

心理学、とくにマイノリティに関する研究は、海外の方が進んでいる部分が多くあります。そのため、いつか海外で研究活動を行い、日本の支援体制や研究の発展にも貢献したいという夢を抱いています。これまでの学びを活かしながら、一つの場所に留まらず、さまざまな挑戦を続けていきたいと思っています。

頼もしさを感じる人柄が魅力
頼もしさを感じる人柄が魅力

高校生・在学生へのメッセージ

もし今目標がなくても、興味のあることをどんどん話してみてほしいです。私自身、何気ない会話がきっかけで留学後のプロジェクトが発展したり、今の就職先のご縁に繋がったことがありました。

最初から完璧を目指す必要はないし、根拠なんてなくてもいいと思います。挑戦と挫折を繰り返す中で、自分らしい道が見つかるはずです!

笑顔で語ってくれた木下さん
笑顔で語ってくれた木下さん

インタビュアーの所感

お⺟様を亡くすという⾟い経験を経て公認⼼理師になる夢を叶えた⽊下さん。簡単な道ではなかったはずですが、それでも⼀歩を踏み出し続けてきた彼⼥だからこそ、今があるんだと感じます。 周囲を安⼼させる落ち着いた雰囲気と、挑戦を楽しむエネルギーが同居する素晴らしい⽅でした。今後の活躍も応援しています!

取材:2025年

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