研究

私の大学人としての活動について (岡田直人)

【自己紹介】

 私は、大阪生まれの大阪育ちです。北星学園大学に勤めるようになり15年目です。若い頃に4年間、札幌の専門学校にも勤めていたので、通算18年間、北海道の各地を訪問する機会に恵まれてきました。

【北海道に対する問題意識】

 北星で私が担当する専門科目は、地域福祉やケアマネジメントに関するものです。元々、高齢者福祉のうち在宅福祉を専門に研究していましたが、2004年の新潟県中越地震以降、防災・減災も研究対象となりました。そして、徐々に、私の興味関心が地域社会を対象とするものに移り変わりました。そんなときに、改めて北海道で勤める機会を得ました。しかし、8年ぶりに北海道各地を訪問すると、その衰退ぶりに、大きなショックを受けました。地方都市から百貨店や企業の支店が撤退し、ビジネスホテルとシャッター街ばかりが増えました。北星では地域福祉を担当するようになりましたが、人口減少と高齢化で地域福祉の担い手である地域住民に地域福祉を推進させる力が弱まっていました。そこで、地方の地域社会に、雇用の場を作り、若者が定住して家庭を持つことができるように地場産業の創出と地域の活性化の必要性を痛感しました。徐々に、私が社会福祉の学問・研究の範疇から、隣接する学問・研究に広がっていくことになりました。

【私の地域住民への働きかけ方】

 そのようなことで、私の興味関心や実践が、地域づくり、雇用の創出のための産業づくり、農福連携に広がり、それらの活動により多くの地域住民の参加を促すために「社会参加はあなたの健康にいい!」をキャッチフレーズに道内各地で講演をしています。6月28日には、室蘭市老人クラブ連合会リーダー研修会でお話させていただきました。加えて、同じ社会参加するなら、嫌嫌でなく、参加者自身が面白いもの、「負担」<「楽しさ」となる活動の仕掛けを紹介しています。これは、私が大阪人であることに起因しているのだと思います。

室蘭市老人クラブ連合会での講演会場の様子

【小樽市での実践と研究】

 また、私は北海道内の自治体や社会福祉協議会とたびたびお仕事をさせていただいています。最近では、小樽市に繰り返し訪問しています。私が委員長として、足かけ3年をかけて小樽市地域福祉計画(2021年3月)ができました。昨年からは、地理的に札幌から余市にかけて横に長い小樽を、もう少し小さい地区で捉えた地域福祉計画を作るため、関係者と協議してモデル地区として、塩谷地区を選びました。この取り組みは、小樽市とコラボした私の研究(科研費)の一環にもなっています。以来、塩谷地区のあちこちを見させていただき、住民や専門職のお話を伺っています。その際、私の興味関心で導入している地域を調べる方法として、NHK番組「ブラタモリ」を参考に、その地域の地理的特性にも着目しています。地域の歴史的変遷や山・川・鉄道・道路・坂が、どのように地域生活を送る上での困りごとを発生させているか把握しようと努めています。併せて、その地域の魅力について、特に力を入れて、発見に努めています。私の塩谷地区の初めの頃の印象は、車の販売店や整備工場が余市に向かう道路沿いにずらりと並んでいるくらいで、地域の魅力を感じることができませんでした。何度か訪問し、お話を伺う中で、わかってきたことがありました。塩谷の住民は、塩谷を小樽とは一線を画したエリアとして捉え、「塩谷愛」を語るのです。塩谷が気に入り移住してきた人もいます。塩谷の何に魅力を感じたかは人それぞれでしょう。私が感じたものでは、塩谷海岸の砂浜・漁港・夕日・入り江のあるロケーション、果樹の田園風景、塩谷丸山から海が見える眺望、かつては葡萄(元々は「紅塩谷」という名前で、現在はワイン葡萄として「旅路」の名前で知られる)を栽培していたこと、段丘があること、小樽やすぐ隣の余市ではワイン葡萄の栽培と醸造が行われていること、余市同様によそ者を受け入れる気風があること、住人相互の助け合いがあること、高速道路の小樽塩谷ICがあること、山中に別荘地があること、そして住民の足となる移送サービスに協力してくれそうな車屋さんがあることなどです。残念ながらJR函館本線塩谷駅はなくなり、地域住民にとって貴重な移動手段がなくなります。最近、病院とスーパーが立て続けになくなりました。しかし、この危機をチャンスとして、多くの地域住民の関心事を地域づくりに主体的に関わろうとする気持ちに変えられるような塩谷の魅力を活かした地区支援計画を住民とともに作っている最中です。

小樽市役所の建物

【北海道行政への働きかけ】

 7月6日には、北海道の仕事で「北の住まいるタウン」検討協議会に参加しました。「北の住まいるタウン」は、「北海道総合計画」に示されている政策展開の基本方向の一つの課題を推進するための特定分野別計画に位置づけられており、「誰もが心豊かに住み続けることができる、安全・安心で暮らしやすく、資源・エネルギー循環が進んだ効率的なまち」を目指すものです。ここでは、「コンパクトなまちづくり」「脱炭素化・資源循環」「暮らしやすさの向上」「災害に強いまちづくり」について、多角的に検討します。私は2015年からこの会議体のメンバーですが、私以外は自然科学系の研究者や専門家ばかりです。私は地域福祉の研究者として発言しています。また、私が実践・研究している農福連携の一環で、北海道の各地にある酪農ででる牛糞をバイオガスプラントでハウスの燃料とし、北海道でコーヒー豆の栽培ができないと検討協議会で提案しています。コーヒーかすは牛の飼料になります。牛乳とコーヒーは相性がよく、6次化の余地が大きいです。この検討協議会では、その筋の研究者との接点もできました。普段、接することがない領域の研究者との議論は、私にとってはとても刺激的で、北海道の将来イメージをいち早く思い描くことができ、ますます北海道のこれからが楽しみになっています。

「北の住まいるタウン」検討協議会の会場の様子

【最後に:私のスタンス】

 以上の様な私の活動は、大学人としての地域社会への貢献の形です。これらは、私にとって新たな研究フィールドの開拓にも役立っており、また現場との信頼関係のもとでゼミ生の就職先の確保にもつながっています。さらに、これらの活動から得られた知見が、北星での教育において、学生をいい現場に連れて行くことを可能とし、私が授業でお話しする現場の生き生きした内容として活かされているのです。是非、北星学園大学のリニューアルした新しい学科「社会福祉学科」で、私と一緒に地域社会に役立つことを考え、実践してみませんか!!お待ちしております。

次回の教員紹介は栗山隆先生です。7月下旬頃を予定しています!

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