社会福祉トークセッション
地域への想い、多様な価値観との葛藤、教員という夢、そして直感——。北星学園大学・社会福祉学科に集まった4人の在学生は、それぞれの動機を持ち、そして北星を選びました。「社会福祉を学ぶとはどういうことか」を、在学生と伊藤教授がともに語り合います。
member
伊藤 新一郎 教授(中央)
[担当科目]
福祉政策論・社会福祉の歴史と思想
対馬 陸 (左端)
教育臨床領域
北海道札幌北陵高等学校出身
牧野 優芽 (右から2人目)
ソーシャルワーク領域
札幌国際情報高等学校出身
川村 小百合 (左から2人目)
地域デザイン領域
北海道札幌厚別高等学校出身
八木 あいる (右端)
ソーシャルワーク領域
静岡県立焼津中央高等学校出身

社会福祉分野を学ぼうと考えたきっかけ
伊藤教授/まず、社会福祉を学ぼうと思ったきっかけを聞かせてください。八木さんから始めましょうか。
八木/コロナ禍で休校が続いた時期の影響が大きかったと思います。一人で過ごす時間が増えて、SNSなどを通じてさまざまな価値観に触れるようになりました。多様性という言葉にひかれる一方で、物事がなかなか解決されないことへのもどかしさも感じていて。正解・不正解よりも、最善に向き合える自分になりたい——そう思うようになったことが、社会福祉を学ぼうと思ったきっかけです。
伊藤教授/なるほど。川村さんはどうでしたか?
川村/私は散歩が趣味で、いろいろな街を歩くのが好きなのですが、かつてにぎわいを見せた商店街がシャッター通りになっているのを見ると、とても寂しい気持ちになります。人と人のつながりから地域を元気にしたいと思ったとき、社会福祉の学びが一番近いと感じました。
牧野/私は、直感が働いた感じです。高校1年生のとき、障害者福祉の講演会に参加したことがきっかけです。当時の私は、人は優秀であることに価値があると本気で思っていた部分があり、講演会で聞いた「誰もがそのままで尊重される」という考え方がとても新鮮で、これが自分の学びたいことだと感じました。
伊藤教授/対馬さんは、教員志望でしたよね。社会福祉系以外の学部でも教員免許が取得できますが、社会福祉分野を選んだ理由はありますか?
対馬/今の学校現場では、1クラスに1〜2人は何らかの支援が必要な生徒がいると聞いています。発達に特性のある生徒やヤングケアラーと呼ばれる生徒など、教師としての関わり方に社会福祉の知識が生きると考えました。教員になることがきっかけでしたが、今は社会福祉の学び自体にもひかれています。
伊藤教授/4人のきっかけはそれぞれ違いますが、社会や人のために社会福祉の専門的な知見で貢献したいという思いが、それぞれのかたちで表れていますね。

数ある大学から北星を選んだ理由
伊藤教授/それでは、社会福祉を学ぶ環境として、北星を選んだ理由も聞かせてもらえますか。牧野さんは、たしか最初は北星を避けていたとか?
牧野/高校の先生に社会福祉を学べる大学について相談したときに「社会福祉といえば北星だよね」と即座に言われ、正直「王道すぎる」と思って避けました(笑)。医療専門職を目指す大学などのオープンキャンパスをひと通り巡って、高校3年生のときに「一応」という気持ちで北星のオープンキャンパスに参加し、そのときに「ここだ」と確信しました。北星は文系大学として社会福祉学部が置かれているので、社会学的なアプローチで学びを深められる点が、自分の求めていた学び方と重なりました。
伊藤教授/ ここでも直感が作用したのですね。川村さんは、カリキュラムの内容で判断したと聞きましたが?
川村/大学案内パンフレットの中で「地域デザイン実習」という言葉が目に留まりました。知識を積み上げてから現場へ出るというよりも、現場で動きながら知見を深める——その学び方が先輩のインタビューなどからも伝わってきて、北星の”現場感”への本気度を感じたことが決め手だったと思います。
伊藤教授/地域と連携した学び方は、社会福祉学科でも象徴的なカリキュラムといえますね。対馬さんの大学選びはどうでしたか?
対馬/私は支援体制の充実度を重視しました。教職を目指すうえで、大学として個人の努力をどのように支援しているかが大切だと思い、他の大学とも比較しました。最終的に高校の先生から北星を勧められたことも、大きな後押しになりました。
伊藤教授/高校の先生から勧められるのは、大学として嬉しい限りですね。八木さんは静岡出身ですが、北海道の大学への進学は、かなり大きな決断ではなかったですか?
八木/姉が北海道の大学に進学し、充実している姿を見ていたことと、高校2年の夏に姉を訪ねて北海道へ来て、人の温かさに感動したことも大きかったです。都会でありながら自然も豊かな札幌も魅力的で、社会福祉を専門的に学べる大学を調べる中で北星に出会いました。社会福祉学部がリニューアルした一期生の年でもあり、縁を感じたのも理由の一つです。
伊藤教授/それぞれの動機や決め手がとても個性的ですが、同じ学科に集まってきているということが、改めて興味深いですね。
自分を変えた印象に残る授業とは―
伊藤教授/それでは、学科の学びで特に印象に残っている授業について聞かせてください。八木さんはいかがですか?
八木/授業は、想像以上に対話する機会が多いことが印象的です。同じテーマでも人により、まったく異なる言葉で意見や感想が語られ、その場で多様性を実感できます。特にゼミでの対話を通じて、お節介と支援の境界線はどこかを探っていく感覚は、今も貴重な経験として記憶に残っています。
伊藤教授/グループワークなどで対話する機会は確かに多いですよね。牧野さんはどうですか?
牧野/1年次の「ソーシャルワーク理論」です。最初は正直、難しすぎて戸惑いましたが、学年を重ねた後に振り返ると、すべてが腑に落ちていく感じがありました。難しいと感じることが、後になって意味を持つ——この感覚を得られたことは自分にとって大きな気づきだったと思います。
伊藤教授/授業のスタンスは各先生の個性が出ますが、学生を同じ志を持つ者として接する先生も多いかもしれませんね。川村さんは、現場の声が届く授業が印象的だったと聞いていますが。
川村/まさに現場を感じた「ソーシャルワーク実践」が印象的でした。現場で働く福祉職の方が大学に来てくださり、働き方や環境について話してくれる授業なのですが、ある施設の方が職員と利用者という立場を超え、自然に友人関係が築かれたというエピソードが心に残っています。福祉の現場には、こんなにも温かい人間関係があるのだと実感できた授業でした。
伊藤教授/北星には福祉職に就いている卒業生が多くつながっているので実現できる授業ですね。対馬さんはどうですか。
対馬/重度の知的障害を持つ子どもの親御さんが書いた本を、ゼミ生全員で読み込み「幸福とは何か」を議論したことが印象に残っています。自分の尺度だけで幸福を語ることの危うさを、深く考えさせられました。教員を目指す自分にとって、一番意味のある学びだったように感じます。
伊藤教授/皆さんありがとうございました。社会福祉の学びは、正解を見つけるものというより、問い続けることで深まりを見せます。4人が語ってくれたように、ここでの学びは自分の生き方によい影響を与えると思います。ぜひ北星で「問い続ける」ことの意味を感じてほしいと思います。