研究

こどもの「育ち方」と「育て方」を支援すること(西田充潔)

学生時代を過ごしたキャンパス(学部棟)から眺めた街の風景です。
私が学生の頃はこの学部棟は未だ建設されていませんでしたが。
夏にはこの街のお祭り前夜祭に打ち上げられる花火が、
とても良く見えるそうです。(2010年撮影)

 「人間の発達と社会」「知的障害者の心理」などを担当します西田です。私は20年以上前の大学院生の頃、日々の勉強・研究をする傍ら、現在の障害児通所支援事業所にあたる通園施設に療育支援“ボランティア”として毎週決まった曜日に通い(学部学生の頃から継続していました)、また、児童相談所の嘱託職員として心理判定業務にも携わっていました。

 通園施設で療育を担当する保育士さんたちは皆、日々の活動の中で様々な工夫をしながら、そして利用する(当時は「利用」とは呼ばれていませんでしたが…)こどもたちやそのお母さん・お父さんたちとのとても暖かく・必要なだけ深く・とことん粘り強い関わりを実践されていましたので、私は“ボランティア”とは名ばかりで、毎回、足手まといになりながらも勉強をさせて頂くことばかりでした。大学生の頃から、そして大学院に進学してからも、研究フィールドにさせて頂きましたので、そうした現場で気づくことが自分の研究の進展にも影響しましたし、また研究データの取得にもご協力を頂いておりました。

 児童相談所では、発達相談を主に担当する部署におりましたので、乳幼児健診の精健や保育・教育相談に心理の担当者として、また療育手帳等の制度利用に関わる心理判定にも携わっていました。そこでは保健師や保育士・学校教諭・PT/OT/ST・児童福祉司らとの適宜のチーム対応がされていましたので、私は、心理学的視点と方法を用いてお子さんのそれまでの「育ち方」を捉え、そしてこれからの「育ち方」をも多少は予測的に考えることによって、保護者がそれまでの「育て方」をふり返り、そしてその後の「育て方」をどのように自信をもって考え・実行していけば良いのかを、チームの一員として保護者を励ましながら一緒に考えることが仕事でした。

 北星学園大学の教員になってからも、近隣の障害児通所支援事業所に定期的に通わせて頂き、学生時代と同じように療育の現場に入ることによって、こどもたちの「発達」と「障害」を、療育スタッフ・保護者とともに考えるという経験は続けてきました。その間、私の中では一貫して“心理・教育の視点”で、こどもたちの「支援」を考えてきたつもりでしたが、それだけではどうにもうまくいかない、その後のお子さんの生活がより“苦しい”ものにならざるを得ないのではと思う経験をたくさんしてきました。そうした中で、本学の学生たちが学ぶ「ソーシャルワーク」の考え方や手法が、“心理・教育”の考え方や手法と相まって、こども支援の正に“両輪”となるべきことに気づかされました。そしてそれは、療育の現場、制度利用のための手続きを中心とする相談機関、それらとは異なる研究者としての立場、これら3つそれぞれの大切な役割に身を置く経験をしてきたことが、少なからず影響しているのではないかと思っています。

 ところで、これまで障害児支援の現場に長らくお世話になり勉強させて頂いてきましたが、療育の現場では「ソーシャルワーク」や「ソーシャルワーカー」という用語や職名は、1990年代の私が学生の頃、全くと言えるほどに見聞きをしたことがありませんでした。今の日本の療育制度でも、未だにそうした傾向が無いわけではありませんが、しかし20年以上前とは違い、その機能や役割が求められる社会へと徐々に変化してきています。本学で障害児支援を学び、福祉や教育の現場に出ていく学生たちには、このような支援の“歴史”を踏まえ、これからの「支援」を作る活躍をしていって欲しいと考えています。

 次回の教員紹介は 永井順子 先生です。10月中旬頃の予定です。

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