コラム

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COLUMN

440時間の実習を経験した学生たちの声から考えたこと
教授 池田 雅子

2017.07.20

 福祉臨床学科では、1年生から4年生まで実習科目を配置しており、毎学年、実習を経験できる点が特徴として挙げられます。時間数を合計すると440時間になります。  現在、「社会福祉士」という国家資格を取得するために国が定めている実習時間は180時間ですから、国の基準の倍以上の実習を用意していることになります。さらに、国際的にソーシャルワーカー養成に必要な基準(グローバル・スタンダード)は「400時間」であり、その基準をクリアしていることになります。国際的な基準である400時間の根拠を問われると、明確な説明は難しいと言われていますが、カナダでは700時間、オ―ストラリアでは1000時間以上というように400時間を超えた基準を設定している国も少なくないのが現状です。
 さて話題を本学の福祉臨床学科の実習にもどすと、1年生の実習科目は必修で、全員が40時間の実習を経験します。2年生以上は、社会福祉士などの国家資格の取得を目指す学生の選択科目であり、2年生で40時間、3年生で180時間、1年次の40時間と合わせると260時間になります。このように、本学科で社会福祉士を目指す学生は、国の基準を超えた実習を経験して、福祉の現場に就職することになります。
 さらに4年生になると、精神保健福祉士の国家資格やスク-ルソーシャルワーカーの認定資格を取得するための実習があります。これら資格関連実習とは別に、「福祉臨床応用実習」という名称で、より高い実践力と研究力の獲得を目指す科目があり、毎年1割前後の学生が履修しています。3年生までの実習に加えてこの科目まで履修すると実習時間は440時間に達します。就職活動や卒業論文などで忙しい4年生の時期に、なぜ180時間の実習を履修したのか聞いてみると、「3年生で180時間の実習をしたが、卒業して現場に出て働くことを考えると、実践力の不足を感じたため」「3年生で納得のいく実習ができなかったから」「実習をしながら、その経験を卒業論文にも活かせるため」など、理由は様々です。また実習を終えた学生たちの感想は、「3年生の実習で言葉としてわかったことが、4年生の実習で実際の経験と繋がり、理解が深まった」「十分とは言えないが、卒業して実践現場に出て行く自信が持てた」などです。そして、ほとんどの履修者が福祉現場に就職し、ソーシャルワーカーとし活躍しています。
 そこで当学科で440時間の実習を経験した学生たちの声と、先の国際基準である400時間を合わせて考えてみると、学校を卒業して福祉の現場に就職し、ソーシャルワーカーとして一歩を踏み出すために「安心できる実践力」を身に付けるには、400時間程度の実習が必要、ということかもしれません。本学科では、そのような機会を用意しています。実践力を身に付けた卒業生を社会に送り出すことこそが、専門職としてのソーシャルワーカーの社会的評価を高める近道だと考えています。

日誌を見ながら、実習経験の振り返り

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