コラム

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COLUMN

リジリエンス resilience
教授 中村 和彦

2018.10.03

 9月6日午前3時7分に発生した最大震度7の「北海道胆振東部地震」は、北海道全域に大きな被害をもたらしました。この未曾有の大災害により亡くなられた多くの方々に心からのご冥福を申し上げますとともに、甚大な被害により、いまもなお避難所生活を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げます。  地震発生直後、北海道全域が停電に見舞われた「ブラックアウト」には大変に驚きました。北星学園大学では、直後から、学生のみなさんやご家族・関係者の方々の被災状況の把握に努め、通電してからは、大学を開放し対応していました。幸い関係者には大きな被害はありませんでした。後期のスタートを延期しましたが、現在は、正常化しているように思われます。
 さて「災害弱者」という言葉がありますが、社会福祉やソーシャルワークの支援対象となる、生活上の課題を抱えた人びとは、今回のような災害の場合には、日ごろの“困り事”や“生きづらさ”に加え、突然の難事に見舞われますと、すぐさま逆境状況におかれてしまいます。現在も継続中ではありますが、福祉臨床学科を卒業されたソーシャルワーカーをはじめ、直接の支援に携わっておられる社会福祉関係者から、支援の困難さとともに幅広くかつ継続的な支援の必要性をお聴きしているところです。  ところで私自身は、地震発生時、仕事のため東京のホテルに宿泊しておりました。まったく不思議なことなのですが、午前3時に目が覚めたのです。直接の体験はしていないのですが、少し変わった不安感や恐怖感が継続しています。またこの間、いつも頭のなかにあったのは「リジリエンス」という言葉でした。
 リジリエンスとは端的に「難事・困難・逆境 adversity に直面しても、それを跳ね返す力」のことを言います。最近、関心をもって勉強しているところですが、個人がもっている「パーソナル・リジリエンス」もさることながら、地域社会にある「コミュニティ・リジリエンス」が重要であり、個人とコミュニティ双方のリジリエンスが、困難な状況下にあって繋がった時に、もっとも力が発揮され逆境を跳ね返すことができることがわかってきています。そのためには双方のリジリエンスを日ごろから構築し、確認しておく必要があります。Adversityにいつ直面するかはわかりません。「転ばぬ先の杖」と言えるでしょうか。
 はからずもですが、10月27日土曜日、カナダから、リジリエンスとソーシャルワーク研究の世界的権威であるマイケル・ウンガー博士をお呼びして、福祉臨床学科主催により、リジリエンスに関係するセミナーを開催します。お時間がありましたら、ぜひ、ご参加ください。

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