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【心コミ・リレーエッセイ 第18回:「オンライン授業」(阪井宏/教授 専門:現代社会学、メディア論)】

2020/08/14

 8月中旬、パソコン越しのオンライン授業が終わった。コロナ騒ぎが収まらない中、大学も教員も精いっぱいの対応をした。しかし空虚感が残る。大切な何かが足りない。

 5年ほど前、全国の学生や市民がドキュメンタリー映像の出来栄えを競う「東京ビデオフェスティバル」に参加した。審査員代表は、先日亡くなった大林宣彦さん。ある大学の作品が入選した。戦後のサハリン(旧樺太)残留日本人を扱った秀作だった。登壇した代表は、真っ赤なミニスカートの女子学生。大林さんが声をかけた。「戦争は悪だよな」。学生が答えた。「戦争は文化です」。聴衆は息をのんだ。「悪」と「文化」は一歩も譲らず、表彰式になった。大林さんが学生に賞状を渡す。私は学生が賞状を破り捨てると思った。学生は苦笑しつつ、賞状を受け取った。

 あの日、会場を包んだ空気感を、私は今も忘れない。オンラインが最も苦手とする世界がここにある。教育の本質もそこにある、と私は思う。