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【心コミ・リレーエッセイ 2021年度 第22回:社会調査法でインタビュー調査を実践的に学ぶ(寺林暁良/専任講師 専門:社会学)】

2021/11/17

 「社会調査法」は、地域・国際コース2年生の必修科目です。毎週2コマ続きで大変ですが、事前調査からアンケート調査、インタビュー調査、観察まで、さまざまな社会調査の方法を実践形式で楽しく(!)学んでいます。今回はその中から、2週にわたって私が担当したインタビュー調査の授業を紹介します。


 授業では、まず私がインタビュー調査の種類や方法、注意点などを講義しました。そして、学生たちに「『食事』をテーマに、誰でも構わないのでインタビュー調査を実施する」という課題を出し、そのための調査計画を立ててもらいました。ポイントは、身近な人が対象であっても、表面的な会話にとどめるではなく、「社会」や「文化」、「生活」について考察できるようなインタビュー内容にすることです。


 学生たちは、祖父母や父母、友人などに、本当に面白いインタビューを実施してきてくれました。ほんの一部の内容ですが、次に挙げてみたいと思います。


Aさん:(Aさんの祖母が子どもの頃、自宅に)馬もいたの!?

Aさんの祖母:昔は機械なかったから馬が(農作業を)やってたの。本州は牛だけど北海道は馬なの。なんでだろうね。それはばあちゃんにも分からない。そこのところは全然疑問に思わなかった。馬は耕すしょ。まず土を掘って、それを平らにして、水はって、そしてまた平らにして、荷物運んだり、馬がやる。後、馬の馬糞。堆肥ができるのね。それを今度は使うん。今の肥料って感じ。それを撒いて田んぼを起こす。あれ、今考えれば馬いなかったら肥料どうするんだろうね。


Bさん:看護師時代を振り返ってどのように生活していましたか。

Bさんの母:大学病院にいた頃は、日勤は朝8時から夜中の12時。準夜勤の時は夕方4時から午前4時。深夜勤は夜中の12時から次の日の昼の12時まで働くという感じでした。その中で新しいことも覚えなくてはいけない、知識も入れなくちゃいけないということで勉強も帰ってからしなくてはいけないので、勤務と勉強する毎日だったと思います。仕事に行っても休憩時間はほとんどなく、持っていったお昼ご飯を食べながらずっとたくさんの心電図モニターを見て、何か異常があったらすぐに飛んでいくというのが生活で、常に気を張っていました。患者さんの命も預かっていますし、緊張感をもって働かないとすぐに命に直結するような仕事ですから、しっかりとした意識を持ってやっていました。そのような時に、持っていった混ぜご飯を食べる時が唯一の癒しの時でした。



 このように、インタビュー結果からは、かつての農村生活の情景、お仕事のご労苦やその時の心情などがありありと浮かんできていました。インタビュー調査はまさに調査者と対象者のコミュニケーションです。学生たちは身近な人への調査を通じて「対象者をより理解できた気がした」「知らなかった側面を知ることができた」といった貴重な体験をしてくれたようです。


 調査が終わった後は、各インタビュー調査の振り返りとして、「インタビュー調査を実施するにあたって大事なこと」をレポートにまとめてもらいました。さらに、各自のレポートを授業全体で共有するとともに、グループに分かれてレポートの中で重要な指摘を「コード」として付箋に書き出し、KJ法と呼ばれる方法で質的分析を行いました。


 2年次の社会調査法で実践する調査はまさに入門編です。卒業研究に向けては、プロジェクト実習や専門演習(ゼミ)などといった各授業の中で、さまざまな調査の経験を重ねてもらうことになります。



写真:ある班の「インタビュー調査で気をつけるべきこと」の分析結果