研究

「障害」とインターセクショナリティ(田中耕一郎)

 ここ数年、障害学(研究)の分野でよく聞かれる言葉に、インターセクショナリティ(intersectionality)という言葉があります。日本語に訳すと「交差性」となりますが、障害学においては、障害、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、国籍、年齢などの要素の交差に着目しながら、権力関係や差別の複雑さを捉えるための言葉として用いられています。

 実際に、「障害者」と言われる人たちは、すべて「障害者」としての(せい)だけを生きているわけではありません。例えば、「障害者」であると同時に、女性であり、黒人である人もいれば、性的マイノリティの人たちもいます。このように、特に社会的に差別や抑圧を被るリスクの高い複数の要素を持つ人々は、これまで、ともすれば、国の法律や政策から、また、マイノリティたちの社会運動からも取りこぼされてきました。  これからの障害学や障害者福祉の研究や実践には、「障害」のみに焦点を当てた従来の研究·実践から、「障害」と交差するさまざまな要素を視野に入れた取り組みが求められています。

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