研究

日本の社会保障財政に関する英語論文を執筆しました(安部雅仁)

 社会保障の財政と医療の経済問題に関心をもって勉強している安部雅仁と申します。日本では社会保障のあり方が問われ、その中でも財政の安定化が重要な政策課題になっています。年金と医療、介護などの社会保険が社会保障の中心とされ*)、主に高齢化に伴って給付費が増加しています。
*)社会保障給付費は2020年度(決算額)で約132兆2千億円であり、この中で年金が55兆6千億円、医療が42兆7千億円、介護が11兆4千億円となっています。
 これらの制度の維持・安定化を図る上で、収入面では社会保険料や租税の負担を増やし、支出面では給付費の増加率を抑制する対策がとられています。財源が不足する際の資金の一部は公債発行により賄われますが、その残高が大きく増加する中で、対GDP(国内総生産)比が長期的に上昇しています。こうした課題に対する基本的施策として、社会保険料の引き上げの他に消費税の増税(税率の段階的引き上げ)による財源の確保が選択されています。しかしこれだけでは、収入と支出のバランスの改善・維持は困難と考えられています。
 財源の主な負担者は労働者とされますが、日本では、少子化に伴って労働者数が次第に減少する中で、何らかの健康リスクを抱える中高年の労働者の割合が増えていると言われます。これに対する施策の一つとして、予防医療の促進により「心身の健康を維持しながら、長く働くことができる社会・経済」の実現が望ましいとされます。これは、労働力の確保と労働生産性の維持に限らず、社会保障の負担者の増加、年金や医療・介護の給付費の増加率抑制それぞれにおいて有用と考えられています。
 一般に予防医療は、医療制度改革あるいは医療経済におけるテーマの一つになっていますが、社会保障の財政安定化に関係する新たな施策として重要性が増しています。こうした取り組みは、民間企業(個人事業を含む)に限らず、公的機関等においても提唱されています。
 日本の社会保障財政の動向と課題、安定化策に関する英語論文の執筆機会をいただき、以下の(1)が本の表紙、(2)が担当した章の概要(Abstract)になります。電子ブックは2023年9月に発行され、書籍での刊行は2024年1月の予定です。
 私は、学科専門科目の「福祉財政論」「社会保障論Ⅱ」「医療経済学」等の科目を担当しています。これらの講義の中で上記の内容を紹介して、社会保障のあり方について皆様と一緒に考えたいと思っています。

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