教育

ニュージーランド研修について(岡田直人)

 社会福祉学科の専門教育科目に「海外福祉実習」があります。この科目は2年生以上の人がその希望により参加できるものです。2024年度は、福祉計画学科の3・4年生と一緒に、社会福祉学科の学生が初めて参加します。行き先はニュージーランド南島の中心的な都市クライストチャーチです。時期は夏休みの8月29日(木)~9月9日(月)を予定しています。現地で9泊、飛行機の往路と復路で1泊ずつします。また、往路の経由地のシドニーでは、乗り継ぎ時間を使ってオペラハウス周辺を観光します。ニュージーランドでの受入校はクライストチャーチ市街地中心にあるAra Institute of Canterbury(以下、アラ)です。アラでは、ニュージーランドの社会福祉法制度やソーシャルワーク実践およびマオリについて学びます。国立教育機関であるアラでは、ソーシャルワーカー養成だけでなく、調理師や美容師など数多くの職業訓練を行っています。また、修士課程をもっており、日本にないタイプの教育機関です。

 実は、コロナ禍でニュージーランド研修は4年間実施できませんでした。しかし、先日(2024年2月21日(水)~3月4日(月))、4年ぶりに学生8名と一緒にクライストチャーチに行ってきました。以下では、どのような研修になったのか、概要をお伝えします。

 今回は、シドニー経由でしたが飛行機便の都合でシドニー観光はできませんでした。飛行機は往復ともに新千歳空港⇔羽田空港⇔シドニー空港⇔クライストチャーチ空港を乗り継ぎました。搭乗時間は羽田・シドニー間は10時間、シドニー・クライストチャーチ間は3時間です。また、日本とニュージーランドの時差は、ニュージーランドの夏シーズンで4時間、冬シーズンで3時間です。そのため、日本からアメリカやヨーロッパに行くのに比べ、時差ボケがあまりないのが有り難いです。

 クライストチャーチ到着後は、マラエというマオリの神聖な寺院を見学しました。このマラエだけでなく、訪問する施設やアラでの授業の前に、マオリの文化を尊重した挨拶の習慣として、ホスト側は歓迎の祈祷と唄を歌います。そして、ホンギ(肘や肩を互いに抱いて、互いの額と鼻をくっつけて、息を吸ってその場の空気を共有する)を行うことが度々ありました。加えて、ゲスト側は、自分のルーツを祖父母くらいまで遡って、自分はどこの誰かを説明します。また、食べ物を共有する習慣があり、ランチ時に軽食を訪問先や授業後にいただきました。

 アラでは、マオリに関して、ニュージーランドの歴史からヨーロッパ人の入植やワイタンギ条約と絡めながら説明を受けました。そして、マオリの西洋化が進められた結果、マオリの文化・言葉・親子関係が失われるのですが、1986年以降、それを取り戻す取り組みを学びました。現在では、ヨーロッパ人系ニュージーランド人でも、マオリ語を話す人が増えているそうです。この学びは、北海道でアイヌのこと、アイヌのこれからのことに正に当てはまります。つまりニュージーランド研修は、単にニュージーランドの福祉を学ぶ、ついでにマオリを学ぶことではなく、福祉と同等にマオリを学び、アイヌを学ぶきっかけにもなるのです。

 アラでは、ニュージーランドの社会福祉に関する法制度やソーシャルワーク実践およびソーシャルワーカー養成について学びました。それらをアラの学生が受ける授業に入って学ぶこともありました。アラの学生と北星の学生は、すぐに意気投合し、スマホの翻訳アプリを使って、単にコミュニケーションを取るだけでなく、アラの学生が、先生が話した内容をスマホに打ち込み、日本語に翻訳して北星の学生にまわして見せてくれました。この光景は、4年前にはなく、スマホやアプリの進化の賜物だと感じました。また、アラの紹介でマオリの支援施設、病院、保育園を訪問しました。

 ニュージーランドは、日本よりも治安がいいとされており、研修プログラム以外の時間は、基本自由時間としました。そこで学生たちは、スマホのアプリで、目的地へのバスを確認したり、Uberを呼んで遠出して動物園へ出掛けたり、LIME(電動キックボード)に乗って移動していました。宿は8人部屋(2段ベッド)のドミトリーで、共用キッチンで自炊していました。そのような時に、多国籍の若者と交流もできたようです。旅程では、2度の週末があったため、学生たちだけで、観光バスでアカロアへ行って、船に乗って世界一小さなイルカを見たり、ハリー・ポッターの世界を彷彿とさせる旧カンタベリー大学の校舎を見学したり、インドのお祭りに参加して全身カラフルな粉まみれになったりと、ニュージーランド滞在を満喫していました。

 クライストチャーチは、2011年2月22日に大きな地震があり185名が亡くなりました。そのうち、倒壊したビルで語学研修を受けていた日本人28人も犠牲となりました。その慰霊碑が市街地のエイボン川沿いにあり、滞在中に追悼で訪問しました。

 クライストチャーチは、北海道に共通するものが多く、食事や飲み物も大変美味しいところです。今回は、円安と物価高のため、4年前より1.5倍くらいの費用がかかりましたが、それでも30万円ほどで、北星学園大学での他の海外研修の半分程度の費用で済んでいるようです。社会福祉学科の専門教育科目のなかで唯一、海外で行う実習となっています。もし、興味があれば、オープンキャンパス等でこの実習についてお尋ねください。

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