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ワインレポート 仕込み編

2022年10月6日(木)岩見沢市栗沢:10Rワイナリー
天候:曇り時々雨(少し雹混じり)
気温:8.6℃

北星学園大学高等学校のある余市町のワイン用葡萄農家さんによって育てられ収穫された1.8㌧の「シャルドネ」が到着しました。今年は、雨が少なくなく天候は厳しかったようですが、きれいな健全な葡萄が届きました。

ブルース:(1粒食べて)おいしい。良い葡萄、嬉しい。果皮は、淡いグリーン色、果実味がほどよくあって、酸もしっかりある、健康でバランスがとれてとてもよい。シャルドネは、独自の強い風味を持たない。まだ、真っ白なキャンパスのような状態、だからこれから私の力が試される。今後状態を見ながらどのように描いていけるのか今から楽しみ。

葡萄がワイナリー(醸造所)へ運ばれます。

ワイナリーに運ばれた葡萄は、ベルトコンベアから搾汁用のプレスへ移されますが、その際に腐敗したものや実が熟していないもの、傷のある実を除外する選別作業を行います。この日は、全国からブルースさんの元で研修をされている方達がこの作業を丁寧に行ってくれました。有難うございました。

圧搾機を使ってブドウを全房のまま潰し(破砕)、圧搾(プレス)し、果汁を絞り出す工程です。1回で7度、低圧から高圧へ約2時間くらい搾り続けます。この搾汁機は、1回に約500㎏の葡萄から350㍑の果汁が搾り出せます。今回は2回行いました。

ドイツ製の機械ですがフランスの会社が販売しています。空気圧式圧搾で、中に空気で膨らむ大きな風船が設置されており、その風船が膨らむことで搾汁を行います。ブドウに余分な圧力が加わらず非常にキメの細かい果汁が抽出できるそうです。

ゆっくりシャルドネの果汁が落ちてきました。ブルースさんは、早速果汁をグラスに移し状態を確認します。糖度も19度くらいあり、スパークリングワインには最適な状態。

ブルース:思った通り。味の深みとストラクチャ(骨格)があり、酸味もしっかりあって、微かにリンゴ、ナシなどの青い香り。素晴らしい。

約2時間ほどかけて搾った果汁は澄んでいますが、ほんの少し濁っており、一度別のタンクに果汁を移し、2日ほど置いて、浮遊物や固形物などを沈殿させ取り除く作業(デブルバージュ)を行います。

ブルースさんのアシスタント:上田大輔さん(本学OB)

10Rワイナリーに勤めて8年目になる上田さんは、本学文学部の卒業生です。北海道らしい自然で大地を感じるワインを造りたいと思いブルースさんの門を叩きました。物静かで黙々と仕事をこなす上田さんは、まさに「地の塩」のような方です。今回の60周年記念ワイン作成の過程でお力添えいただいています。

オリジナルスパークリングワインレポート仕込み編は、ここまでです。


今回のスパークリングワインは、伝統的方式、トラディショナル方式で造られます。 今日の工程や今後についてブルースさんは、次のように語ってくれました。

ブルース:今日は、葡萄を房ごとプレスに入れて絞り、低圧でゆっくり搾った一番搾りをこのタンクに入れた。高圧で搾ったものは、分けて別のタンクに入れる。その理由は、高圧で搾ったものは、果皮の成分とかも抽出されそれは渋みえぐみとかが若干あるから。これは、今回のスパークリングワインには入ってほしくないから分けて別のワインに使う。低圧でとれる一番おいしいジュースをこのタンクに入れている。これは、ただのジュースなので2日間おいて、澱(おり)を沈める。上澄みを別なタンクに入れて発酵が始まる。バイオ酵母を添加せずに野生酵母、つまり葡萄の果皮に付着している酵母を一次発酵させる。多分3週間から1か月くらいはかかる。
じっくりと野生酵母で発酵させる。その時に外にある木の大樽に移す。毎日発酵が元気に進んでいるかチェックする。腐敗や欠点が感じられないように注意する。発酵の終盤になったら容器を満杯にする。最初に満杯にしてしまうと発酵の泡立ちが激しいのであふれてしまうから。発酵が終わってガスが出なくなったら、最後には蓋を閉める。
発酵後の貯蔵に移る。フランス語では、エレバージュという。育つという意味。大学の皆さんと同じようなこと。ワインが生まれてきているところだが、やっぱり赤ちゃんのように発酵直後には、一体感が無いようなもので、じっくりと育って行ってだんだん丸さが出てくる。いい味になったら澱引きをして、きれいな上澄みを、二次発酵にかける。
シャンパン方式なので、瓶内二次発酵の準備に入る。完全に辛口にした白ワインに少し補糖をして、酵母を加える。シャンパン用の瓶に詰めて王冠で口をしておく。二次発酵ででる二酸化炭素が逃げられないからそれがスパークリングワインの泡になる。瓶詰はたぶん来年の2月頃だと思う。その後、10ヶ月くらいは瓶内二次発酵をする。
その後、6ヶ月くらい発酵後の貯蔵を行う。その理由は、瓶内に酵母がたくさん増えて泡をつくるが酵母は発酵が終わると底に沈み酵母の旨味とか香ばしい香りが溶け込んでいき、フルーティで香ばしくリッチな感じが生まれるから。
その次が、王冠に溜まった澱落としの作業。ルモワージュという。瓶を逆さまにして専用のラックに入れて少しずつ回して澱を段々口の方に集めるようにする。
最後は、手作業で王冠をとると瓶内の気圧で澱の部分が自然に飛ばされる。その後、きれいなワインで補填して栓を詰めて終わる。その後はラベル貼りと出荷になる。1樽で300本程度のスパークリングワインが出来上がる予定。
いいブドウから始まっても完成までプロセスはしっかりとみていかなければならない。

2024年4月頃スパークリングワイン(ブラン・ド・ブラン)に仕上げていきます。そのレポートについては、次回お送りする予定です。

ワインは、農作物であり生き物です。人の力の及ばない産物ですので、今後どのように完成していくのか。皆様の温かいお見守りをどうぞよろしくお願い申し上げます。

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