北星学園大学・北星学園大学短期大学部

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社会福祉夏季セミナー

 

2010年夏のセミナーを最後に半世紀の歴史を閉じた北星学園大学社会福祉夏季セミナーの記録を編纂する過程で、大学の倉庫に入り、資料探しを行った。探しあてた初回分からの古いファイルが段ボール3箱分、それを研究室に持ち込み、文字通り一冊ずつ紐解きながら過去の記録として残す上でどのような軌跡が考えられるのか、半信半疑の気持ちで読み進めた。

偶然、第1回目と3回目の隷書体でデザインされたポスターが出現した。見ただけで説明不要の圧倒的な重量感をもって我々に迫るものを感じた。そこには、イベントをおこなうというセンスではなく、参加者に厳しい問いを投げかけると同時に話題提供者の全力を傾けて取り組まなくてはできない本格的なテーマが3日間にわたる企画として提示されていた。しかも、日程は、月、火、水という平日の講座であり、定員は60名で締め切り、社会福祉専門職が前提となって募集されていたのである。

テーマをみるとセミナーの第一日が「施設におけるケースワークとグループワークをめぐって」、「施設における問題児の発見をめぐって」、「クライエントの人格・行動の測定をめぐって」というターゲットを絞った組み立てとなっており、一般市民向けという講座ではないことはすぐ理解できる。第二日は「施設におけるクライエントの社会保障をめぐって」、「児童の発達と保育をめぐって」、「心身障害児(者)のリハビリテーションをめぐって」というこれまた専門職の本格的な研修課題となっている。第三日は「社会福祉施設の従事者をめぐって」、「社会福祉施設と地域社会をめぐって」、「社会福祉施設の管理運営をめぐって」というプログラムが午前11時から昼食をはさんで午後4時まで続く。驚かされるのは、これらに加えて、セミナーの前に午前9時30分から11時までセミナーに関連する講義が3日間展開されていたことである。

これを確認して、後輩である私たちは、反省を求められていると気づかされた。つまり、参加者は①少人数で、②毎日4時間の演習に参加し発言を求められ、③そのための導入講義が入念に準備され、④緊張感のある研修となっていた当初の企画は、現在、研修講座に求められている「参加原則」、「テーマの限定」、「講義内容の専門性」、「主催者のチームワーク」が全面に出ている。

先駆的、本質的なセミナーの精神(ミッション)を横において、セミナー後半期は、多くの場合、多忙なことを理由に「集客力のある外部講師依頼」、「参加しやすい曜日」、「コンパクトな企画」といった主催者の負担軽減も意識されていた。くわえて多くの研修や講座の氾濫が大学におけるセミナー主催を集客困難にさせているという総括につなげて、待ちの姿勢で一般的な教養講座を提供することは「歴史的な使命を終えた」として、今年度後期から始めることとなった出前講座を想定させる「アウトリーチの時代へ」舵を切ることで夏季セミナーを閉じることとなったのだった。

確かに、現在は焦点を絞って企画を立て、少人数でも納得できる内容を用意して、研修機会を提供する時代となっており、かつてのような教養講座のような企画は参加者に支持されなくなっている。

今回まとめた夏季セミナーの歴史は、全国的にも先駆的な取り組みとなってきた北星学園大学社会福祉学部(以前は文学部社会福祉学科)の歴史を広く知って頂くものとなっていると同時に、セミナーを主催してきた私たちの地域社会貢献と研究実践のあり方に自覚を促すものとなっている。

2011年11月7日
記録編集担当 社会福祉学部教授 杉岡直人

 

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