北星学園大学・北星学園大学短期大学部

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ムスリム居住地区フィールドワーク

―多様性の複雑さ―

文学部 心理・応用コミュニケーション学科 3年
 堀内 敬太

オーバーンについて

 西シドニーにあるオーバーンという地域は、ムスリム(イスラム教徒)や中国系、ベトナム系のオーストラリア人が多く住む地域です。その雰囲気はシドニー中心部とはまるで異なっていました。中国語やアラビア語で書かれた店の看板が並び、別の国に来たような感覚さえありました。また、この地域は2017年に行われた同性婚の賛否を問う国民投票においてオーストラリア全土で最も反対率が高かった地域です。

▲アフガンベーカリーでパンを買う(激安!)

▲パキスタン料理のレストラン(日本では味わえない)

オーバーンを訪れたきっかけ

 このフィールドワークのきっかけは、シドニー大学の学部生との交流会でした。そこでは、性的マイノリティに対する互いの国の現状について話し合いました。その中で、ムスリムの学生が「LGBTQの人のことをリスペクトはするが、サポートはしない」と話しました。それまで、シドニーの性的マイノリティへのサポート活動が多くあることを聞いていた私にとって、彼の発言には意表を突かれました。しかしそれと同時に彼の考え方を一つの多様性として受け止め、もっと理解したいという気持ちも生まれました。交流会の後に彼から「多様性について勉強したいなら、僕の住んでいるオーバーンに行くといいよ」と言われ、数日後にオーバーンでのフィールドワークを行いました。何かしら彼の発言の背景を推測できるだろうと考えたからです。

▲イスラム教徒の礼拝所であるモスク

モスクでの特別な出会い

 オーバーンにはムスリムの人々が礼拝をするためのモスクがあります。私たちはそこを訪れ、礼拝の様子を見学し、モスクを管理している男性にオーストラリアンムスリムの暮らしなどについて、いくつか質問しました。私が彼に「あなたは政府に何を求めますか」と聞くと、「9.11のテロ以降、イスラム教への差別を受けていて、私の妻も、精神的・肉体的に差別を受けたことがあった。この現状を政府やオーストラリア国民にもっと知ってほしい」と彼は言いました。人種、宗教、セクシュアリティなどの差別の軸が組み合わさり、独特な抑圧が生じているという『交差性』が、多文化国家オーストラリアの内側にあることを知った瞬間でした。それと同時に私は、あの学生も複雑な抑圧の下に生きているということを痛感しました。
 私は将来小学校教員になることを目指しています。あのムスリムの学生が、「将来は、ムスリムの子どもたちが安心して通える学校を作りたい」と言っていたのを今でも覚えています。私は、シドニーでこのような出会いがあったからこそ、できることがあると考えています。教員になった時は、日本の社会で偏見に苦しんでいる人や複合差別を受けている人を支援し、ともに歩める子どもたちを育て、いつか彼と再会し自分の成長した姿を伝えたいです。

▲モスクを案内し、質問に真剣に答えてくださった管理人の方(一番左)

 

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