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(学長メッセージ)学生への「生成AIの利用について」の発出について

2023年05月22日

北星学園大学・同短期大学部の学生の皆さんへ
生成AIの利用について

学長 大坊郁夫

 オープンAIという企業によるChatGPTやマイクロソフトのBingなどの自然言語AIチャットボット(対話型AI)の開発が急速に進んでいます。つい最近5月18日にはアメリカでスマホのアプリも開発されました。日本版も間もなく登場するでしょう。近頃は皆さんも見聞きする機会が増えたことと思います。使い勝手を試した人も少なく無いと思います(なお、ChatGPTの上位ツールとして、日本語の精度の高い有料のGPT4もあります)。
 日本国内ではChatGPTを利用する方針を決めた企業や自治体が現れるとともに、これを歓迎してビジネスチャンスとして急速にその活用方法も流布し始めました。
 簡単な質問をするだけで、いかにも自然な言葉で速やかに答えてくれます。Google などで検索するのに比べて質問に対して的を絞って答えてくれますので便利だと思う人は多いはずです(複数の事柄の特徴を比較するよう求めると、リスト形式で列挙してくれます)。従来よりも得たい情報を効率よく得ることができるので有用です。過去の知識を組み合わせて得られる類いの情報を提供するのはお手のものなので、「斯く斯く然々の利点と欠点を述べよ」というような問いには実に適切な回答をしてくれるように思います。
 また、キーワードを複数示してそれを織り込んだ歌や短歌などもスマートに作ってくれます。類する対話型AIは今や急速にその種類を増しており、かつ、それぞれ特化した違いも見られます。ChatGPTですと、6番までの歌詞を作ってくれます。グーグルのBardですとサビまでつきますし、曲をつけるように指示すると音楽ライブラリーを使ってコードも加えてくれます(ちなみに「5月、ライラック、北星学園、サラ・スミスを込めた歌を作ってください」という問いに答えたChatGPTとBard の作品を参照してください。
 さらには、テキストを入力すると高精度の画像を作成する画像生成AIも複数あります(Stable Diffusionを無料で使えるHogging Faceな ど )。
 このようなツールは今後益々精度を上げ、各々の 目的に特化した専門的なツールも登場するはずです。しかも、それは今想像する以上のスピードで進むことでしょう。
 便利なものには、同時に避けられない課題、問題があるものです。われわれの質問(要求)に即座に適切な回答してくれる背景を考えてみましょう。
 どのAIも基本としては、インターネット上にある膨大な情報を収集・検索してわれわれの質問に答えるべく日々準備をしています。かつ、利用者の質問もAIの素材として用いられています(なお、Bardでは、検索時の力点の置き方のオプションがあり、また、利用者の質問がAIの素材として利用しないとの条件を付けることができます)。そして、われわれが入力した質問内容の「キーワード」に高頻度で登場する単語を探しているのです(ある単語と共に登場する確率の高い(つまり共起する)単語)。現時点では少なくとも因果的な流れで回答文章を作成しているのではありません(いずれ、因果性まで勘案するシステムが出来るでしょう)。ですから、情報を誤って用いている可能性は多々あります。自分なりの確認が必要です。なお、ChatGPTでは答えに根拠を示しませんが、Bing では参照したウェブ上の情報の所在(アドレス)まで示します。また、 同一の質問を異なるAIにして得られる結果を比較すると分かりますが、それぞれが参照している情報源には違いもあるようで同じ結果が示されることは少ないようです。さらに、日々情報源の更新をしているので、時期によっても回答結果は異なります。
 インターネット上にある情報が全て著作権フリーとは限りません。当事者が望まない個人情報や作品が収集され、用いられている危険性があります。そうすると、皆さんが、侵害しているつもりはなくとも著作権侵害をしているリスクもあります。
 また、自然で要点を踏まえた文章で回答してくれるので、それをそのまま皆さんが作成したレポートとして教員に提出するような行為は、不正な剽窃に当たります。それには、“検索”しただけの労力しかかかっていません。皆さんを正当に評価する成果物には当たりません。同時に、課題について考察し、文章として練るという本学での大事な学びを忘れないでください。
 どの専門分野であっても 、高等教育機関で学ぶ際には、当該の基礎知識を会得し、学びの方法論を踏まえ、教員や 仲間と議論し、自分なりに試行錯誤しながら考察の対象に近づき、考察を積み重ねることが不可欠です。この創造する努力こそが後々の自分をタフにするのです。
 世の中の全ての技術は常に進歩します。対話型AIは益々便利になるはずです。それを上手く活用することは大事です。この種のツールを使用するリテラシーを磨くことは必要です。同時に、その背景や課題を正しく捉え、今・これからを生きる者としての知恵を身に付けたいものです。
 また、オープンAIのサム・アルトマンCEOが来日し、5月10日に岸田文雄首相らと面会し、 課題への対処で日本政府と連携する意向を示しました。さらに、G7に先立ち富山市で開催された教育相会合でも教育現場での活用ではメリットとデメリットのバランスを考慮することの重要性を共有され、G7広島サミットの初日5月19日には、 生成AIの国際ルール作りを進めることで合意しました。このことは、このAI開発・利用が世界的に大きなインパクトを持っていることを示している と言えましょう。
 新たなツールを利用して創造的な活動を行うことは大事なことです。ただし、利点と欠点はあるものです。それをよく理解して正しく利用してください。
 なお、対話型AIの使用法について多くの大学が発信しています。それらも適宜参照してください。
 生成AIの倫理的・法的・社会的課題について、大阪大学の社会技術共創研究(ELSI)センターの「生成AI(Generative AI)の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)論点の概観:2023年3月版」が参考になります。関心のある方は参照してください。
 ChatGPTに自らの利点と欠点について説明を求めてみました。その結果はなんとも妥当だと思います。ChatGPTの利点欠点を参照してください。

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